奈良公園(奈良市)の名物の鹿が子孫を残すため、野生さながらの激しい行動をとっていることはあまり知られていない。雄は多数の雌を囲うハーレムを形成するが、雌を引きつける“武器”の立派な角は、観光客や建物に危害が及ばないよう毎年秋に切り落とされてしまう。しかし、その後も雄は“香水”代わりに公園の泥や自分の尿を体に塗りつけるなど涙ぐましい努力を続け雌へ猛アピール。ハーレム形成後は餌に目もくれず集団を見張り、“過労”から20~30キロも体重を落とす雄もいるという。かわいいだけでない、知られざる奈良の鹿の生態を紹介する。(山崎成葉)
■雄の象徴「角」
一般財団法人「奈良の鹿愛護会」によると、奈良公園には、野生状態や保護施設「鹿苑(ろくえん)」内にいる鹿も含めて約390頭の雄がいる。雌は、その2倍の約860頭。
雄にだけ満1歳から角が生え、毎年生え
ニューバランス996替わる。角は春先に新しく生え始め、9月には整う。最も立派な年代は7~8歳の壮年期で、通常は約60センチまで伸び、3つに分かれて4つの枝角が生える「三又四尖(さんさよんせん)」になる。枝角が長いほど立派とされる。
角の形は気象条件や餌の量にも影響されるとされ、角が左右対象にそろった雄は全体の1割程度に限られる。10歳を超えて老齢期に入ると、角は縮小傾向となり、枝角が出なくなる。交通事故などで負傷し、角の形がいびつになることもある。
■ハーレム形成へ
雄は8月下旬~11月下旬ごろに発情期を迎えて気性が荒くなり、気に入った雌をハーレムに入れようと必死に追いかける。ところが、雌の方は“タイプ”の雄でないと逃げ去ってしまう。
ここでアピールポイントになるのが角だ。もてるタイプは角が立派で体格がよく、筋肉が発達して首も太い雄だ。そんな“ハンサム”な雄は、多
ニューバランス1400い場合20頭ほどの雌を集めてハーレムを形成する。
雄は立派な角を維持するため、常に木などにこすりつけて磨きをかけ、他の雄に縄張りを荒らされないよう、角を突き合わせて闘うこともある。
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