三坪ほどの土間には、家中の雑具が散らかって、梁の上の暑そうな鳥屋(とや)では、産褥(さんじょく)にいる牝鶏のククククククと喉を鳴らしているのが聞える。
壁際に下っている鶏用の丸木枝の階子(はしご)の、糞や抜け毛の白く黄色く付いた段々には、痩せた雄鶏がちょいと止まって、天井の牝鶏の番をしている。
すべてのものが、むさ苦しく、臭く貧しいうちに、三人の男の子が炉辺に集って、自分等の食物が煮えるのを、今か今かと、待ちくたびれている。
或る者は、頭の下に敷いた一方の手を延して、燃えかけの枝で、とろくなった火を掻きまわして、溜息を吐く。或る者は、さも待遠そうに細い足をバタバタ動かしながら、まだ湯気さえも上らない鍋の中と、兄弟共の顔を、盗み視ている。けれども誰一人口をきく者は無く、皆この上ない熱心さで、粗野な瞳を輝かせながらただ、目前に煮えようとしている薯(いも)のことばっかりを、考えているのである。
プロフィール
カテゴリー
最新記事
P R