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「アベノミクス」の影響

 「アベノミクス」の影響もあり高額商品市場が活況を呈している。しかし、同じく高額商品が飛ぶように売れた80年代のバブル景気とは様子が違い、ただ「高いもの」ではなく、付加価値を兼ね備えたプレミアムな商品が選ばれているという。今、なぜこの商品が売れているのか。本連載では、高額商品市場から見えてくる消費者のインサイドに迫る――。
* * *
エコブームやナチュラル志向の高まりなどから近年、都市部で植物に囲まれた生活を送る人が増えている。ストレス解消や癒し効果を期待して、また近隣住民とのコミュニケーションツール、緑のカーテンによる電力消費量削減、プライバシー保護などの目的で、ガーデニングを本格的に始める都市生活者も増加傾向にある。加えて食の安全性に対するニーズの高まりから、ハーブなど各種野菜を自宅の庭先やベランダで作ろうという消費者も多い。
 インテリア/ライフスタイル雑誌『ELLE D〓COR(エル デコ)』日本版は過去3年“緑のある生活”を特集してきた。同誌の木田隆子編集長は昨今のグリーンブームを次のように見る。
「3年前に『グリーン』で特集を組んニューバランス スニーカーだのは、私自身が植物と触れ合った生活をしたいと考えていたことが大きかったんです。特にマーケティング調査をして企画を組んだわけではありません。しかし、読者の反応は想像以上で、3年連続、同じような特集を組むことになるとは思ってもみませんでした。
 この3年でわかったことは、現代に生きている我々は、とにかく植物と共生したいと考える人が多いということ。以前からお花や緑が好きな方はたくさんいました。しかし、今、大きく変わっているのは継続性の部分ではないでしょうか。部屋に切り花を飾り満足するのではなく、そこで“育てる”ことまで考えている方が多いような気がします。育てる楽しみ、植物を愛でる気持ち、それが人を満足させている。家族が増えるような……そうですね、ペットを飼う感覚に近いかもしれません。また室内にグリーンを取り入れるだけでなく、例えば緑があふれるお庭にアウトドア用のチェアを置いたりする人も多くなっています。グリーンにこちらか“会いに行く”というスタンスです」
 そんな中、都会的でスタイリッシュな園芸スタイル「アーバンガーデニング」というコンセプトが注目を集めている。ただ単に身の回りに多くの植物を置くというのではなく、ヴィンテージのガーデニングアイテムやウェア、雑貨などを用いボタニカルライフをお洒落に楽しもうというスタイルである。“高級インテリア”としてのガーデニングだ。
 そんな都会派園芸愛好家たちが足繁く訪れるショップが、東京?白金の「BIOTOP(ビオトープ)」だ。3年前、同地で20年間、洋服などファッションアイテムを販売していたブランド「Adam et Rop〓(アダム エ ロペ)」の本店が、グリーンのある都会的生活を提案するショップとしてリニューアル。以来、植物から雑貨、洋服、コスメなど各種アイテムを取りそろえ、さらにオーガニックな食材を使った食事を楽しめるカフェまで併設する複合型ライフスタイル提案ショップとして人気を集めている。
店は地上3階建てで、1階ではオーガニックコスメや様々な物販が販売されている。2階は最新のトレンドを反映したウェアの並ぶクロージングスペース、さらに3階にはゆっくりとした時間を過ごすことができるカフェ?レストランが入っている。各フロア、至ニューバランス レディースるところに目につく植物はすべて購入することも可能だ。
 
同店1階のボタニカルショップ「BIOTOP NURSERIES (ビオトープ?ナーセリーズ)」で店長を務める濱麻衣さんに話を聞いた。
「お客様は年齢層、性別問わず様々です。初めて植物を育てたいという方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々に人気なのがサボテンや多肉植物。リーズナブルな値段のものもあることと、なにより育てやすさもあり売れています。今、店内の植物はクリスマス時期なので少し色づいていますが、普段はもっと緑が多いんです。やはり緑をゆっくり育てて、一緒に生活したいと考えている方が多くなっているからだと思います。また、お洒落な園芸グッズも人気が高いです。お客様は洋服を選ぶような感覚でグッズや植物を買っていかれます。シャツとパンツの組み合わせを考えるように、植物と鉢の組み合わせを悩みながら買われたりしていますね。約2年こちらで働いていますが、正直、こんなにお客様の受けがいいとは思っていませんでした」
 実はガーデニングブーム自体は2000年前後に一度ピークを迎えている。その後、需要の低迷や安価な輸入品の増加などで、ガーデニング関連市場は伸び悩んでいた時期もあった。そんな中、近年の「リバイバル」。グリーンブームを楽しんでいるのはスタイリッシュに楽しむお洒落な人たちだけでない。退職後の余暇を楽しむ団塊世代ユーザーや、食の安全意識の高いファミリーユーザー、集合住宅でもベランダ菜園を楽しむユーザーなど、今や幅広い。また“初心者”だけでなく、前回のブームで挫折した層が多く戻って来ているのも今の特徴だという。
 神奈川県川崎市の「株式会社グリーンケア」は2002年に設立されたガーデニング専門の会社だ。神奈川、東京の個人邸を中心に年間の新規注文数は約600件にも上る。昨年12月期決算で年商約1億5千万円と大きく成長を続けている。
同社の河越徳秀社長は昨今のグリーンブームについてこう語る。
「以前のブームの際は“イングリッシュガーデンってこんな感じだよね”というイメージや憧れだけで始めた方も多かったと思います。しかし、植物を育てるにはいろんな知識を注ぎ込まないと、なかなかうまくいかないもの。今、一度、挫折して再びガーデニングを始めようという方が多いのですが、そんな方々はかなり勉強もされているし“植物を育てる”という考え方が強くなっている。“ただ花屋さんにあるプランターを買って来て、終わり”ではないんですね。植物とサステナブルな関係を築こうという人が多くなっています。ですから資材にしても多少高額でも頑丈で長持ちするものを選ぶようになっているし、植物も“ワンシーズンで終わりのお花”というより、多年で楽しめる宿根草を取り入れようという方が圧倒的に増えています。ちなみに我が社の一軒あたりの単価は数年前に比べ2割も上がっています。各家庭でかける金額は様々ですが、全体的に高額化傾向にあるのは間違いないですね」
 都市生活者のナチュラル志向は今に始まったことではない。しかし、今、起こっているそれは、「融和」が重要視されている。アスファルトやコンクリートの隙間に無理矢理、花を咲かせるのではなく、あくまで自然と都市がバランスよく「融和」することを前提としている。これまで、都会の緑は公園の植栽やビオトープの造成など行政や企業が取り組んで増やしてきた。しかし、今は個人が居心地のいい空間を手に入れるために、自宅に緑を増やす時代となってきている
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