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探偵小説が書きたいの1

ピカピカ光る太陽の下を傲華 ごうか な流線スターがスウーと横切る。その中に色眼鏡をかけて済まし返っているスゴイような丸髷 まるまげ 美人の横顔が、ハッキリと網膜に焼付いたまま遠ざかる。アトからガソリンの臭いと、たまらない屍臭とがゴッチャになってムウとするほど鼻を撲 う つ。
 ……ハテナ……今のは、お化粧をした死骸じゃなかったか知らん……。  と思うトタンに胸がドキンドキンとする。背中一面にゾーッと冷たくなる。ソンナ探偵小説が書きたい。  美人を絞殺して空屋 あきや の天井に吊しておく。  その空屋の借手がないために、屍体がいつまでもいつまでも発見されないでいる。  タマラなくなった犯人が、素人探偵を装って屍体を発見する。警察に報告して、驚くべき明察を以て自分の犯行の経路を発 あば く。結局、何月何日の何時何分頃、何ホテルの第何号室に投宿する何某という男が真犯人だと警官に予告し、自分自身がその名前で、その時刻に、その室 へや に泊る。
その一室で警官に猛烈な抵抗を試みた揚句 あげく 、致命傷を受けて倒れる。万歳を三唱して死ぬ。ソンナ探偵小説が書きたい。  或る殺人狂の極悪犯人が、或る名探偵の存在を恐れて是非とも殺して終 しま おうとする。  そうすると不思議にも、今まで恐怖という事を知らなかった名探偵が、極度にその極悪犯人を恐れるらしく、秘術を尽して逃げ惑うのを、犯人が又、それ以上の秘術を尽して逐 お いまわる。とうとう大きな客船の上で、犯人が探偵を押え付けて、相抱いて海に投ずる。  二人の屍体を引上げて、色々と調べてみると、犯人は探偵の昔の恋人であった美人が、変装したものであった。……といったような筋はどうであろうか。  トロツキーが巴里 パリー 郊外の或る小さな池の縁で釣糸を垂れていた。嘗 かつ て親友のレニンが、その池に投込んだというロマノフ家の王冠を探るためであった。  トロツキーは成功した。やがて池の底から金玉燦然 さんぜん たる王冠を釣上げてニコニコしていると、その背後 うしろ の夕暗 ゆうやみ にノッソリと立寄った者が在る。 「どうだい。釣れたかね」
 トロツキーがビックリして振返ってみると、それはレニンであった。莫斯科 モスコー の十字路で硝子 ガラス 箱入の屍蝋 しろう と化している筈の親友であった。  トロツキーは今些 すこ しで気絶するところであった。王冠と、釣竿と、帽子と、木靴を残して一目散に逃失 にげう せてしまった。 「ウワア――ッ。幽霊だア――ッ」  レニンはニヤリと笑ってアトを見送った。草の中から王冠を拾い上げて撫でまわした。 「アハハハハハ俺が死んニューバランス ランニングシューズだ事を世界中に確認させるトリックには随分苦心したものだ。しかしあのトロツキーまでが俺の死を信じていようとは思わなかった。
 トロツキーは俺の筋書通りに動いてくれた。彼奴 きゃつ にだけこの王冠の事を話しておいたのだからな。……俺がアレだけの大革命を企てたのも、結局、この王冠一つが慾しかったからだとは誰も知るまい。況 いわ んや俺が革命前から、この巴里 パリー で老舗 しにせ の質屋をやっている、妾 めかけ を三人も置いていニューバランス 574る事なぞ誰が知っていよう。アッハッハッハッ。馬鹿な人類ども……」  といったような探偵小説が、日本では書けないだろうか。
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リヴァイのグッズ

リヴァイの等身大グッズもあり!「進撃の巨人」一番くじが登場 “ハズレなしのキャラクターくじ”として人気の「一番くじ」。
そんな同シリーズに、2013年に大ヒットした人気アニメが題材の「一番くじ 進撃の巨人~自由の翼~」(1回500円)が登場。12月上旬より、セブン-イレブン、アニメイト、ローソン、TSUTAYA及び、全国の書店、アミューズメント施設などで発売されることになった(一部、取り扱いのない店舗もあり)。 こちらの「一番くじ 進撃の巨人~自由の翼~」には、ニューバランス スニーカー8等級全31種の賞品が用意されていて、いずれも「進撃の巨人」ファンにはたまらない、こだわりの光る仕上がりになっている。
それらを順に見ていくと、A賞とB賞にはエレンとリヴァイのクッションが用意されている。どちらも調査兵団のエンブレムである“自由の翼”が描かれたマントを羽織り、逆光のなかに佇むデザインになっているので、挑戦するからには両方のバージョンを手に入れたいところだ。 続いてC賞には、エレン、ミカサ、リヴァイの3体がセットになったビッグラバーマグネットセットが、D賞にはエレンとリヴァイのぬいぐるみが、E賞には超大型巨人と104期生の後ろ姿をモチーフにしたスポーツタオルなどがラインナップ。
またF賞には、ブックカバーや付箋などの雑貨セレクションが、G賞には原作の名シーンが描かれた缶バッジが、ニューバランス レディースH賞には人気キャラクターたちをデフォルメした「ちみきゃら」のラバーストラップが用意されている。 そして、各店舗で最後のくじを引くともらえるラストワン賞には、ミカサのフィギュア(調査兵団ver.)が、くじの半券から応募できるダブルチャンスキャンペーンには、縦幅約165cmのリヴァイ等身大タペストリーが用意されている。これらも併せて手に入れて、部屋中を「進撃の巨人」グッズで埋め尽くそう!

松本潤が演じるコミック

新春“月9”で、佐藤隆太が松本潤にときめく 14年1月スタートのフジテレビ月9「失恋ショコラティエ」(フジテレビ系)は水城せとなの同名人気コミックをドラマ化。
大好きなサエコさん(石原さとみ)との甘い妄想にふけりながら身も心も振り回される一途な片思い主人公?爽太を松本潤が演じる。 先日、ヒロイン?石原ら共演陣が発表されたが、 ニューバランス996追加の共演陣も決定。チョコレート専門店「RICDOR(リクドー)」のオーナーシェフ、六道誠之助には佐藤隆太。六道は世間から「チョコレートの貴公子」と呼ばれるショコラティエ。サエコさんもリクドーのチョコレートが大好きなことから、爽太は六道を当初ライバル視するが、爽太は独自の世界観を持つ六道に心酔し、やがて目標とするように。
実はオネェで、爽太にときめいているという設定になっている。その「RICDOR」で働く従業員で、一見ぶっきらぼうな印象だが冷静な分析や気遣いのきっちりできる好青年の関谷をNEWSの加藤シゲアキが演じる(第2話からの登場)。さらに、爽太の父?小動誠役に竹中直人。パティスリー「TOKIO」のオーナーパティシエだったが、爽太がフランスより戻ってきた後、その「TOKIO」を「ショコ?ラ?ヴィ」に改装することを承諾する。職人らしく ニューバランス1400、厳しくも暖かく爽太やまつりを見守る父親を演じる。 豪華出演者でお送りする人恋しい季節の気分を盛り上げる「チョコレートみたいなラブストーリー」に期待が高まる!

静かな夜

Captain Ernest Smith ――アウネスト?スミス船長は、赤ら顔に白い三角髯の、年とった「海の頑固者」だった。沈没の瞬間まで船橋 ブリッジ に立っていた。海中に投げ出されて、ふと見るとすこし向うに赤ん坊が浮かんでいる。船長は泳ぎ寄って赤ん坊を差上げ、手近の救命艇へ急いで其の小さな遭難者をボウトの中へ入れた。 「船長 キャプテン !」ボウトの人は口ぐちに叫んだ。「このボウトへお上んなさい! 
まだ一人ぐらい大丈夫です」  濡れた白髪を振って船長が答えた。 「いや、私はあの板の破片へ掴まろう」  そして水を蹴って泳ぎ去った。これがタイタニック船長アウネスト?スミス氏の生きて見られた最後だった。  まるで壜のコルク栓をばら撒いたように、溺死体が海面を埋めて漂っているのを、四月十五日の暁の光が淡く照らしはじめた。死者の或るものはボウトの縁をしっかり掴んで、死んでも放さなかった。爪が、塗料を被 き たサイドの板にめり込んでいた。非常な力を宿した儘死んでいる指を一本ずつ開いて、屍骸を取り離すのが大変だった。  数時間後に、最初の救助船カルパセア号が現場に到着した。「水平線にぽっちり灯りが見えたのです」レディ?ダフ?ゴルドンは語る。「ボウトは緑色のライトを点けた先頭の一隻に従って、何時の間にか一列縦隊を作っていました。水平線上に救助船が現れたことは、先のボウトから順々に歓声が伝わって来て判ったのでした。カルパセアも周章てていたのでしょうが、その救助の仕方は極めて荒っぽいものでした。海は静かでしたが、何しろ近くに氷山があるので非道い寒さですし、それに高い舷側から小さな板に綱をつけて下ろして、一人ずつそれに掴まって引っ張り上げられるのですから、私など恐怖と寒気と眩暈のために、引揚げの途中で死にそうでした」  この救命艇からカルパセア号へ引き上げる時、四人の人が誤まって墜落溺死した。  一週間程して、三つの屍骸を載せたボウトが発見された。その内一人は、鎖で足を座板に結び付けられていた。三人は飢えと渇きのために死んだのだ。一人は苦しさの余り海水を飲もうとしたか、或いは、発狂して海へ飛び込もうとして、他の二人が足を結びつけたものであろう。そういう危険を予知して、自分でしたのかも知れない。三人の口中に浮標 ブイ 用のコルクの断片や帆布の切れが噛み砕かれてあった。餓死の苦しみに際して手当り次第に口に入れたに相違ない。結婚指輪が二つ、ボウトの底に転がっていた。  浮かんでいた屍体の中には、爪の跡や擦り傷を一ぱいに見せて、生きんがため如何に足掻いたかを語っているのも尠くなかったが、多くは、醜くない静かな死を死んでいて、一層泪を唆った。二つになる子供が顔を上に潮に乗って流れていた。これだけが救命帯を着けていない唯一の屍骸だった。  この恐怖の夜の思い出は生存者が生きている限り如実に伝えられる。海難と言えば誰しも先ずタイタニック号事件を頭に上すのだ。富豪のジョン?ジャコブ?アスタアとM?T?ステッドの両氏は、沈没後暫らく筏に乗っているのを見たという者があるが、間もなく凍死して浪に呑まれたのだろう。死体は揚らなかった。
 一九一二年四月十四日午後十一時四十分、タイタニック号は大西洋で氷山に衝突した。二時間四十分後に沈んだ。
 白星会社 ホワイト?スター?ライン が世界に誇った当時最大の、一番贅沢な客船だった。総噸数四万六千三百二十八噸、甲板の延長五哩、建造費百五十万磅。  処女航海である。船客二千二百一人。この内救助されたもの僅かに七百十一人。救命艇はやっと七百七十八人を収容し得る隻数しか備え付けてなかった。四百十五人の婦人客のうち三百十六人救われ、百九人の子供の内五十二人溺死している。  貴族、富豪、名士を満載していた。速力、安全、華美、確実、凡ゆる点で最優秀船、海運界の一大進歩、「断じて沈まない船」とされていたタイタニック号だ。それが皮肉な一撃で玉子の殻のように穴があいて海底へ急いだのだ。 「タイタニックは神様の悪戯だった」  こんな言葉が流行った。  その夜の海水の冷たかったことと言ったら、大概の人が水へ這入ると同時に心臓の鼓動が止まった位いである。溺死するより先に皆凍死していた。  この運命を静かに受取った人もある。敢然として死に面した者も尠くなかった。が、多くは互いに争った。獣類のように争った。汽缶の爆破で一片の肉も止めずに飛散した人、下の救命艇へ跳び込もうとして、ボウトの縁へ打っつけたり、海へ落ちたりした者――中には女子供を押し退けて先にボウトへ乗ろうとして、射殺されたのもある。  その何れも死ななくて宜かったのだ。皆助かる筈だった。救命艇さえ規定通りに充分積んでいたら――実にこのタイタニック号事件は、不注意と不熟練に因る大惨劇、世界の航海史に残した拭うことの出来ない大きな汚点だと言われている。ニューバランス ランニングシューズ平時に於て大洋で行われた最も愚鈍な椿事だった。
 暗い、寒い、静かな夜だ。  クリスマス?トリーのように星が輝いて、空気に、凛烈な寒さが走っている。  世界第一の巨船タイタニック号、百五十万磅の「浮かべる宮殿 フロウテング?パラス 」は、船首から船尾まで雛段のように灯りを連ねて、この寒星の下、亜米利加を指して大西洋の白波を蹴りつつある。  食堂は例によってリッツ Ritz ――である。晩餐はすっかり済んで、多くの人々は寝台にいる。カアド室には、デナア?ジャケツの紳士達がポウカアに余念もない。電燈の薄暗い三等室には、トランシルヴァニア、モラヴィア、ヘルツェゴヴィア、ポドリア、シュワビア、カアランドなどという、聞いたこともない中世紀的な欧羅巴の隅々から、新大陸に憧憬れて亜米利加へ出稼ぎに行く移民の女達が、子供の寝顔を見守って物思いに耽っていた。まだ見ない紐育の夢――何んなに新しい、素晴らしい生活が自分たちの前に展がって往くことだろう。亜米利加は、殊に紐育は、黄金の街だと聞いている。亜米利加へ上陸さえすれば、この親代々の貧乏と縁が切れるのだ。この児たちも、米国の市民として、夫れぞれ幸福な生涯を開拓して行くであろう――。
 突如往手に、白い高いものが闇黒に浮く。直ぐ近いところである。氷山だ。船中の警戒の鈴 ベル が鳴り響いて、命令の声々が慌しく飛び交す。機関の音が調子を低めた。船は急ぎ進路 コース をかえて――と、その時、右舷の叱水線下に、ずずずずずんと重く鈍い、引っ掻くような衝激が伝わった。この一接触で、タイタニックは既に、横に長く船腹の鉄板を裂かれて致命傷を受けたのである。
 が、その瞬間の震動 ショック は、決して激しいものではなかった。大部分の人は、知らずに眠っていた。眼を覚ました連中は、ドレッシング?ガウンを引っ掛けて甲板へ出て見た。船は停まっている。甲板では、皆わいわい冗談を言い合って、誰も何の恐怖も感じなかった。若しこの時早くも最悪の場合を予想し得た人があったとすれば、それはスミス船長と二、三の高級船員だけだったろう。  甲板の廊下に水が見えて来た。 「救命帯をお着け下さい! 救命帯をお着け下さい!  http://www.newbalancejptop.com/大至急救命帯を着けて甲板の所定の場処へお集まり下さい!」  船員たちが大声に呼ばわって駈け廻っている。人々の顔は一度に白くなった。顫える指でライフ?ベルトをつけて、各自定められた甲板の位置に並ぶ。  船室にいた人は、ドレッシング?テイブルの上の物が辷り落ちたので、何時の間にか船が、意外な角度にまで傾斜し出したのを知った。救命艇は下ろされた。ここらまで、凡べては静粛に行なわれた――兎に角、そうは言われているのだが、或る生存者の談によると、理性を失った船客の群が最後のボウトに殺到して大乱闘になり、三人の伊太利人が射殺されたとある。しかしこの説に依ると、老船長アウネスト?スミス氏も船橋 ブリッジ で自殺したことになっているが、これは全然誤りである。

まだ音楽が

何んなことがあっても決して沈みはしないと皆信じ切っていた。世界第一の超客船タイタニック号が愈いよ沈みかけたと知った時、そして、全人員の半分――それも無理をして――をやっと脱出せしめるに足るだけのボウトしか備付けてない。つまり後の半分は本船に残って、船と運命を緒 とも にしなければならないということが――船長はこの恐ろしい事実を最後まで秘密にして置く為に何んなに苦心したことか!――船客の間にはっきり知れ渡った時、生物的な本能が船客を暴動に駆らずには置かなかった。しかも、船員の大部分は、救命艇の扱い方、下ろし方さえ知らないのだ。ボウトは、ボウト?デッキという最高層の甲板の両側に、作りつけの台に載って並んでいる。非常時には、これを綱で海面まで吊り下ろすのだが、普段練習 ドリル などの時でさえ、これには余程の熟練を要する。それに、一度本船を離れたが最後、何日も何十日も洋上に漂う覚悟がなくてはならないから、米塩、食糧品の類を人数に応じてボウトの包容し得る最大限度まで積み込まなければならない。船によっては、飲料水や簡単な缶詰などは平日からボウトの底に用意してある位いだ。いざという時には、そのまま甲板の上で人を乗せて、高い舷側から水面へ下ろすのである。想像しても解るように、これは甚だ危険な作業で、闇夜、船は刻々傾き、秒間を争う場合、只さえ引っくり返り易いボウトに平衡を失っている人間を満載して動揺の激しい海面へ下ろそうというのだから、余程落付いた船員が揃っていて上手にやらないと、吊り下ろす拍子に顛覆して人を海へ撒いて終うか、途中で鉄板の舷側に激突させてボウトを粉砕する。さもなければ、海へ着くと同時に本船の船体へ吸い寄せられて破壊するかだ。この厄介な作業に対して、タイタニック号の乗組員は、実に不覚にも訓練が届いていなかった。ことに、上を下へと逆上してやることだから、耐ったものではない。ボウトの底の水栓 プラグ を外した儘下ろす、水も食糧も積み込まないうちに綱を引く。途中でロウプの操り方を誤ってボウトはバランスを失って真っ逆さまに人を降らす――タイタニックの乗組員に、この肝心のボウト下ろし方の習練 ドリル が出来ていないのを知った時、突如狂気のような暴動が全船客を捉えたのは無理もない。  甲板上は露骨な争闘だ。生きんがための地獄を現出した。婦人と子供を真っ先にボウトに乗り移らせるのは、難船の場合の常識である。それを無視して、発狂したような男達が女を突き落す。子供を※[#「てへん+発」、213-上18]ね飛ばす。ボウトの傍には高級船員が拳銃 ピストル を擬して立っていて、こういう者は射殺して構わないのだ。中には、自分の妻を先に出そうとして、他の女達を必死に押し退けるもの、良人に獅噛みついて離れまいとする妻、暗い甲板に取り落されて無我夢中の船客の群に踏み躙られる嬰児、子供たちの悲鳴と、もう、恥も外聞もない合唱のような婦人連の泣き声――その間もタイタニックは、船首を海中に突っ込んで、緩く大きく逆立ちの形に傾きつつある。断じて沈まないとされていたタイタニック号が、まるで襤褸貨物船 フレイタア か何ぞのように他愛なく沈み出したのだ。全船に明あかと灯が点って、ジャズ?バンドはまだ奏楽を続けている。高調子 ラグタイム のジャズ、ダンス音楽、いまこの大西洋の両岸で、倫敦と紐育が口笛に吹いている流行の威勢のいい曲が、数千哩を隔てた暗い寒い洋上に次ぎ次ぎに沸き起って、憐れにも華やかに鳴り響いていた。人心を落ちつかせるためにというスミス船長の命令で、音楽部員は必死だったのである。  上甲板の無電室では、主任技師フィリップスが懸命にSOSを放っている。SOSは新しい信号でCQDから変って間もなくだった。 「そうです。そのSOSってやつを打つことです。出来立ての信号ですから使い古されていないで愉快です。これからもあんまりSOSを叩く機会はないでしょうから、この際大いにやりましょう」  楽天家の無電助手ブライドが、こんな冗談を言って笑った。船長もそれを聞いて、 「そう度びたびSOSを打つ機会があってたまるもんか」  と笑った。みんな声を合わせて笑った。好い加減浸水すれば傾斜が止まって、そう訳もなく沈むようなことはない筈だ。そのうちには、航行船の多い海路である、救助船の一隻や二隻は現れるだろうと、その場になっても、まだ戯談を言って笑う余裕が残っていたのだ。  その時、助手の Bride が鳥渡無電室を出て帰ってみると、火夫の一人が救命帯 ライフ?ベルト を盗みに忍んで来て、SOSを打ち続けている技師 Philips の背中から其の救命帯の紐を解きに掛っている。フィリップスも知ってはいるが、そんなことに構ってはいられない。救命帯を奪られるに任せて一心不乱に無電を叩いているのだ。何うしてその火夫にだけ救命帯が往き渡らなかったものか、混雑の場合だから失くしでもして、気違いのようになって探しに来たのだろうが、それを見たブライドは、前後を考える暇はなかった。傍らにあった鉄棒を取り上げて一撃の下に火夫の頭を打ち砕いた。フィリップスは血の飛沫を浴びながら、振り返りもせずにSOSを打電しつづけた。  最後の救命艇が本船を離れようとしていた。各船室から甲板からまだ明るく灯が点っていた。二等運転士のハウオウスがイサドル?ストラウス夫人にボウトに乗り移るように奨めると、夫人は断乎として拒絶して、 「ストラウスの傍を離れるのは嫌です。ストラウスの行くところへ私も行きます」  そして夫妻は、腕を組んで傾く甲板に立っていたが、半時間後には、しっかり抱き合って、海中深く捲き込まれ去った。  ジョン?ジャコブ?アスタア氏は、十九歳の有名な美人との新婚旅行の途にあった。彼はその花嫁をボウトに助け乗せながら、 「さようなら、愛する妻よ。僕は船に残るが、君が助けられると同時に僕も助けられるだろう」  と囁いたが、それが最後の言葉になることは、アスタアも知っていた。彼は助かろうとは思っていなかったのだ。  船に居残った船客と船員は協力して、ひっきりなしに火箭 ロケット を打ち揚げた。物凄い炸音が夜空を裂いて、遠く高く光の矢が走った。非常信号の一つである。流星のような光線が水に映えてその瞬間海上一帯は真昼のように明るかった。重油のような黒い水、その上を点々と遠ざかって行くボウト、ぎっしり詰った人々の影、そして巨大な船腹を天に聳やかしているタイタニック、傾ぎゆく甲板に押し並んだ死のように白い顔、顔、顔――蒼茫たる光野に一閃する海の地獄絵だ。が、このタイタニック号の狼煙 のろし を認めた通行船はなかった。火影を認めた船はあっても、狼煙とは思わなかった。  加奈陀の退役陸軍少佐でポウシェンという人が乗っていた。遭難と同時に船長が絶対の権威をもって役に立ちそうな男の船客に各受持ちを定めて命令を発したのだが、ポウシェン少佐は兵員陸揚げなどで経験があるというので、救命艇の一つを預かって避難者の積込み方を監督することになった。彼は船室へ駈け帰って何か一ぱいポケットへ押し込み、下ろしかけたボウトへ最後に跳び乗って、四時間半も休みなくオールを漕いだ。このボウトは発見されて、全員とともに少佐も救助された。それはいいが、気がついてみると、ポケットにオレンジが三個ごろごろしているだけで、少佐は無一文である。始めて気がついた。狂気のように船室へ取りに帰ったものは、金だったのだ。オレンジではなかった筈だ、その船室の卓子 テエブル の上には四万六千磅 ポンド の紙幣束が積み上げられ、トランクの中にも公債や何かで多額の財産があったのである。金を取りに帰ってオレンジを三つ掴んで飛び出したのだった。武人だけに金銭には恬淡なのだとも言えまい。非常時の狼狽 あわ て方にはよくこんなことがある。助かった少佐は口惜しさの余り当分失神したようになってしまった。  生存者の一人、レディ?ダフ?ゴルドンは始終船橋 ブリッジ の傍を離れずに吹き曝しの甲板に立っていた。と、一つ上の甲板から、まるで幽霊に操られでもするように黒い小さなボウトが一隻音もなく揺れ下って来た。船長の非常用ボウトだった。レディ?ゴルドンが、 「乗っても宜しゅう御座いますか」  と訊くと、ボウトの中から一等運転士のマアドック Mr. Murdock が答えた。 「さあ、何卒。お手貸ししましょう」  どの記録で見ても、このマアドックという人が一番沈着だったとみえる。女のなかではレディ?ダフ?ゴルドンがしっかりしていた。後で新聞記者にした話しなどでも、この人のが最も整っていて信頼された。その時もマアドック運転士は、まるで劇場の前で貴婦人を自動車へ乗せるように、日常的な微笑と口調で手を差伸べてレディ?ゴルドンをボウトへ扶け入れている。二人の亜米利加人の男が続いて乗り込んだ。もう一人短艇 ボウト が舷側に吊り下ってから、ボウトを飛び下りたが、これは外れて海中へ墜落した。  船腹の半ばまで下った時、ワイヤ?ロウプの一本が軋んで動かなくなった。マアドック一等運転士が素早く切り離すと、ロウプはびゅんと唸って人々の頭上に挑ね返った。ニューバランス レディース一人頚部を打たれて即死している。 「海面へ達してみると」レディ?ゴルドンの思出話しだ。 「ボウトは満員なんです。五、六人の水夫がオウルを取っています。私は秘書のミス?フランクとずっと一緒でした。漕ぎ手は一生懸命です。船が沈むと、大きな渦巻が起ってボウトを吸い込むというので――少し本船を離れると舷側が、途轍もなく高い黒い絶壁のように見えました。甲板や船窓の列なりに、幾段もの灯の線が上下に重なっています。まだ音楽が聞えていました。船首を先に一デッキずつ水に呑まれる毎に、上から順に、ゆっくりと灯の列が消えて行きます。電燈の点った窓が水に接する時は光を溶かした波が遠くまで繊細に揺れて、あの場合ですけれど、凄絶な美観でした。最初の恐しい爆発が起ったのはその時です。轟音と同時に一時に灯が消えて、真紅と金色の閃光が立ち昇りました。すると、その直ぐ後、そこらの海全体を覆い尽して人々の叫びです。 http://www.newbalancejptop.com/呻きです。私はあんな恐しい人間の声を聞いたことがありません。暗い海一面に、高く、低く、細く、鋭く、何とも形容のできない人の声なのです。第二の爆破が続きました。それからまた海から湧き起る恐しい唸り声――随分長く聞えていました。今だに、あの大勢の声を想い出すと、地の底から足首を掴まれて引き込まれるような気がします」  静かに、堂々と、タイタニックは沈んだ。沈みながら、厳粛な楽の音と甲板の上の人々の合唱が水面から響いていた。 「Nearer, My God, to thee. Nearer to thee. 主よ、御許に近づかん――」

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

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